「お耳に入れておきたい」の意味とは?
「お耳に入れておきたい」は、相手に配慮しながら事実や情報を伝える前置きの言い方である。直訳のイメージは、あなたの耳に情報を入れる、つまり伝達の丁寧表現である。伝える側がへりくだり、知らせる内容が相手にとって重要だったり、知っておくと役に立つ場合に使われる。強く主張したいときの表現ではなく、穏やかに注意を引くためのクッション言葉である。
この表現は、報告や共有の前置きとして置くことで、聞き手が構える時間を作れる。たとえば、急な予定変更、軽微な不具合、先に知っておいてほしい背景など、結論の前に相手の受け止め準備を整える効果がある。文章でも会話でも使えるが、文面ではやや改まった印象になる。
社内と社外では温度感が少し違う。社内では、相手が上司や先輩でも使えるが、フラットな共有では簡潔な言い方のほうが合う場面もある。社外では、初回連絡や重要な連絡の前置きに添えると、唐突さを和らげられる。ただし、冗長に見えないよう文量のバランスを取ることが大切である。
また、あくまで前置きの一文であり、これだけでは何を伝えるのかが分からない。続けて要点を短く述べることが必要である。「お耳に入れておきたい点が二つあります。第一に〜、第二に〜」のように、続く構造が見えると読み手は理解しやすい。
FAQ:ビジネス以外でも使えるの?
日常会話で使えなくはないが、少し改まった印象になる。友人同士なら、伝えておきたいことがある、のような平易な言い方が自然である。年配の人や改まった場では違和感が少なく、丁寧に聞こえる。
新入社員が知っておくべき使い方の基本
まず、前置きと要点の順序をはっきりさせる。前置きで丁寧さを示し、すぐに要点を一文で示す。要点の後に、根拠や詳細を短く添える。結びで依頼事項や次の行動を明確にする。これが読み手にやさしい基本構成である。
基本の文型は次の通りである。
- 前置き:お耳に入れておきたいことがございます。
- 要点:本日の会議は明日に延期となりました。
- 補足:理由は会場トラブルのためです。
- 行動:詳しい開始時刻は追って連絡します。
組み立てのコツは三つある。第一に、主語と責任の所在をはっきりさせること。誰の判断か、どの部署の情報かを書き添える。第二に、相手に必要な範囲で簡潔にまとめること。第三に、相手の時間を奪わない語数で書くことである。
敬語の方向にも注意する。あなたに伝えるという行為を丁寧に述べるため、文全体を丁寧体で統一する。相手を持ち上げる表現と自分をへりくだる表現を混ぜすぎると読みにくい。過剰な重ね敬語を避け、自然な一文でまとめる。
正しい文法構造を理解しよう
続きが見える前置きにする。たとえば「一点、お耳に入れておきたいことがございます。明日の受付時間が変更となりました。」のように、前置きと結論を近づける。また、「お耳に入れておきたい」だけで文を切らず、名詞を受ける形で具体化する。「お耳に入れておきたい変更点がございます」のように、何についてかを明示する。
「お耳に入れておきたい」のNG表現とは?
次のような点は避ける。
- 前置きだけで本文がない。何を伝えるのかが分からない。
- 長い前置きで要点が遅れる。相手の時間を奪う。
- 相手の耳を主語にする言い回しを多用し、不自然になる。
- 重大なトラブルの初動として使い、緊迫感を弱めてしまう。
- 連発して文章がくどくなる。段落ごとに意味が薄れる。
FAQ:「お耳に入れる」と「お伝えする」の違いは?
大きな意味は近いが、前置きとしての柔らかさが違う。「お伝えする」は行為そのものをはっきり言う。やや直球である。「お耳に入れておきたい」は相手への配慮を示し、注意を穏やかに引きたいときに合う。要点が明確ならどちらでもよいが、文脈に合わせて選ぶと読みやすい。
実際に使える!ビジネスメールの例文集
ここでは、社内、上司や先輩、取引先の三つの場面で使える文例をまとめる。件名、前置き、本文、結びの流れをひな形化し、目的別に書き換えられるようにする。
社内向けメールでの使用例
目的が共有の場合の例。
件名:明日分の搬入時間についてお耳に入れておきたい件
本文:
お疲れさまです。物流課の山田です。
一点、お耳に入れておきたい確認がございます。明日の搬入時間が、施設側の都合により30分繰り下げとなりました。新しい開始時刻は10時30分です。各チームの集合は10時15分に変更をお願いします。以上、現場調整のうえ進めます。
目的が注意喚起の場合の例。
件名:在庫カウントの差分についてお耳に入れておきたい点
本文:
お疲れさまです。倉庫管理の斎藤です。
お耳に入れておきたい点が二つあります。第一に、昨日のカウントで一部差分が見つかりました。第二に、該当品番は出荷停止とし、本日中に再確認します。関係する担当の方は、午後のミーティングで共有にご協力ください。
上司・先輩への丁寧な伝え方
目的が報告で、簡潔に結論を示す例。
件名:進捗に関してお耳に入れておきたいこと
本文:
お疲れさまです。新人の鈴木です。
お耳に入れておきたいことがございます。A案件の見積もりは本日提出し、先方から一次回答をいただきました。費目Aが想定より高く、再調整の要望があります。明日、修正案を持参してご相談させてください。
目的が相談の場合の例。
件名:見積条件の見直しについてお耳に入れておきたい件
本文:
お疲れさまです。営業の田中です。
一点、お耳に入れておきたい相談がございます。先方の数量前提が変更となり、単価の調整が必要かもしれません。方向性について、本日の定例後に10分ほどお時間をいただけますでしょうか。
クライアントへの配慮を示す文例
目的が連絡で、相手の負担を下げる例。
件名:来週の打合せ時間に関してお耳に入れておきたい確認
本文:
いつもお世話になっております。株式会社○○の中村でございます。
お耳に入れておきたい確認が一点ございます。来週の打合せですが、会場工事のためオンライン開催に切り替えをご提案いたします。ご不便をおかけし恐縮ですが、接続先のURLは前日までにお送りいたします。
目的が注意喚起の場合の例。
件名:仕様書の最新版についてお耳に入れておきたい事項
本文:
いつもお世話になっております。○○の中村でございます。
お耳に入れておきたい事項が二点ございます。第一に、仕様書の最新版が本日付で公開されました。第二に、旧版の記載と差異があり、見積影響が出る可能性がございます。最新版のリンクを本メール末尾に付記しました。ご確認のうえ、ご不明点をお知らせください。
FAQ:件名に入れても大丈夫?
件名に入れてもよいが、要点がぼやけないようにする。件名の前半で結論を示し、末尾に短く添えると読みやすい。たとえば「会議時間の変更について(お耳に入れておきたい件)」のように、主題が先で前置きは補助に回す。
会話や電話での自然な使い方
会話では、前置きは短く、結論ははっきりである。相手が忙しそうなら、一言で注意を引いてから要点に入る。電話では、相手の状況が見えないため、聞きやすい速度で区切ると伝わりやすい。
口頭でのスマートな前置き
現場で使いやすい一言の例を挙げる。
- すぐにお耳に入れておきたいことがあります。A社から納期の連絡です。
- 一点だけ、お耳に入れておきたい共有です。資料の差し替えがあります。
- 先にお耳に入れておきたいのですが、受付が混雑しています。
短い前置きの後に、結論を一文で伝える。余裕があれば理由を一つ足す。相手の反応を待ち、必要な情報だけを追加する。
トラブル回避に役立つ伝え方のコツ
- 数を示す。要点が複数なら、はじめに個数を言う。
- 影響範囲を先に言う。誰に関係するのかを明確にする。
- 次の行動を提案する。相手の負担を見積もって選択肢を出す。
- 感情語を減らし、事実と時系列で整理する。
FAQ:急ぎの連絡で使うのは不適切?
緊急性が高いときは、前置きなしに結論から入るほうがよいことが多い。相手の安全や業務の停止に関わる場合は、結論を最初に伝える。その上で、必要なら後から背景を補う。
言い換え表現と使い分けのポイント
近い表現は多い。使い分けの軸は、フォーマル度、目的、相手との関係である。次の表で、主な表現の向きと使いどころを整理する。
「ご連絡」「ご報告」などとの違い
- ご連絡:情報を知らせる行為全般。広く使える。
- ご報告:結果や経過を伝える。責任あるトーン。
- 共有:同じ情報を持つことを目的にする。社内向けで軽め。
- 申し添えます:補足情報を添えるときに使う。
- お伝えします:直接的で分かりやすい言い方。
- お耳に入れておきたい:相手に配慮しつつ注意を引く前置き。
フォーマル度別のおすすめ表現
| 目的/状況 | カジュアル社内 | 標準社内/社外 | かしこまった社外 |
|---|---|---|---|
| 通知 | 共有します | ご連絡いたします | ご連絡申し上げます |
| 進捗報告 | 進捗共有です | ご報告いたします | 取り急ぎご報告申し上げます |
| 相談 | 相談したいです | ご相談させてください | ご高配のうえご相談申し上げます |
| 注意喚起 | 注意です | ご注意ください | 失礼ながら注意喚起申し上げます |
| 前置き | 先に伝えます | お伝えいたします | お耳に入れておきたい件がございます |
表の通り、「お耳に入れておきたい」は前置きの役割として、かしこまった場面で効果がある。社内の気軽な共有では、短い言い方に切り替えると読みやすい。
FAQ:「共有」とはどう違う?
共有は、同じ情報を持つこと自体が目的である。前置きにならず、主語が行為をはっきり示す。「お耳に入れておきたい」は注意を引く前置きなので、その後に内容が続く。文中で役割が違うため、併用も可能である。
「お耳に入れておきたい」を使うときの注意点
回りくどくならないよう、前置きは短く保つ。二文以上の前置きは原則避ける。本文に入ったら、時系列と数字で要点を整理する。相手がすぐに行動できるよう、期限や担当を明示する。
相手や状況に合わせる姿勢も大切である。社内で定型の言い回しがある部署では、その型に合わせる。社外の初回連絡では、相手の業界の慣習に配慮する。繰り返し使うと硬い印象が強くなるため、別表現と組み合わせるとよい。
また、重大な不具合や謝罪では、回りくどさが逆効果になる場合がある。率直に結論から述べ、責任と次の対応を明確にする。前置きは短く、必要なら後段で丁寧に背景を説明する。
回りくどくならないための工夫
- 前置きは一文。読点は二つまでに収める。
- 結論を名詞句で要約してから説明する。
- 数字で示す。日時、数量、期限を入れる。
- 次の行動を明記する。誰が、いつ、何をするか。
タイミングと相手に合わせた配慮
- 朝一番の会議前など、相手が確認しやすい時間帯を選ぶ。
- 上司や先輩には、結論を先に出し、相談事項を後に回す。
- クライアントには、負担を減らす提案をセットにする。
FAQ:社外で初対面の相手に使ってもよい?
使えるが、前置きの後に具体をすぐ示すことが重要である。長い前置きは相手の負担になる。初回は特に、件名や冒頭で要点が一目で分かるようにする。
まとめ:社会人1年目から使える丁寧な伝え方
本記事の要点は三つである。第一に、「お耳に入れておきたい」は丁寧な前置きであり、続く要点を短く明確にする。第二に、目的に応じて言い換えを選ぶ。第三に、相手の時間を大切にし、結論と行動を先に示す。
明日から使えるチェックリストを示す。
- 前置きは一文で短く。
- 結論を一文で先に。
- 目的と影響範囲を明確に。
- 数字と期限を入れる。
- 次の行動と依頼を明記。
最初の一文のテンプレも再掲する。
- 一点、お耳に入れておきたいことがございます。結論は〜です。
- 先にお耳に入れておきたいのですが、〜が変更となりました。
- お耳に入れておきたい確認がございます。〜をご確認ください。
相手に伝わる表現を意識しよう
相手の状況を想像し、必要な情報だけを先に出す。読みやすい順序で書くことが、丁寧さにつながる。前置きはあくまで入口であり、要点と行動で価値が生まれる。
敬語は「正しさ」と「思いやり」のバランスが大切
形式にとらわれすぎず、相手が理解しやすい句を選ぶ。迷ったら、結論を短く、補足を必要最小限にする。繰り返し使いながら、部署や相手に合う型を自分の言葉にしていく。

