導入:この記事でできること(結論も先に)
黄土色(オーカー系)は、茶色+黄色の混色だけでもかなり狙って作れる便利な色です。風景なら地面・砂・岩、人物なら肌の下地、クラフトなら木・革・古紙っぽい質感まで、いろいろな場面で「一色で雰囲気が出る」万能色として使えます。
ただ、同じ「黄土色」でも、
- 砂っぽく明るい黄土色にしたい
- 土っぽく渋い黄土色にしたい
- ほんのり赤みのある黄土色にしたい
…など、目的が違うと必要な比率も変わります。
そこでこの記事では、迷わず再現できる手順に絞って、次の3つをまとめます。
- まず最短:茶+黄で作る黄土色の基本レシピ(比率目安つき)
- 失敗しがちポイント:暗い/赤すぎる/濁るの直し方(戻し方の順番つき)
- 画材別:水彩・アクリル・ガッシュ(不透明)・色鉛筆での作り分け(同じ比率でも見え方が変わる前提で解説)
さらに、読み終わったらすぐ試せるように、途中で「サンプル表の作り方」も入れています。混色は感覚より、小さく試して当てるほうが早いので、ここを押さえると次から一気に安定します。なお、この考え方は黄土色だけでなく寒色系でも同じで、青を一から作る手順は「マゼンタとシアンで青を作る方法」でも詳しく解説しています。
先に結論:
茶色:黄色=1:2 を起点にして、
「明るくしたい→黄(+白)」「渋くしたい→茶(+青ほんの少し)」で微調整すると安定します。
※この記事は主に「絵の具/色鉛筆」での作り方が中心です。デジタルの参考値(RGB/HEX)はFAQにまとめています。
黄土色とは何色?(似ている色との違い)
黄土色は、黄色の明るさに茶色の落ち着きが加わった、土・砂・石・古紙のような自然物に多い色です。
黄土色の特徴
- 温かい:黄〜オレンジ寄りの温度感
- 派手すぎない:彩度が落ち着きやすい
- 使いどころが多い:背景の地面、木、革、肌の下地など
似ている色との違い(ざっくり)
- ベージュ:黄土色より白っぽく、黄みが柔らかい
- キャメル:黄土色より茶寄りで、革っぽい深さ
- カーキ:黄土色より緑み・くすみが入りやすい
「黄土色っぽくならない」ときは、狙っているのがベージュ/キャメル/カーキのどれ寄りかを先に決めると、調整が早いです。
まずは結論:黄土色の基本レシピ(最短)
ここからは、作る順番で書きます。
茶色+黄色で作る(最短レシピ)
- パレットに黄色を多めに出す
- 茶色を少しずつ足して混ぜる
- 目安は 茶:黄=1:2(まずここから)
黄色を先に多めに出すと、茶を入れすぎて暗くなる事故が減ります。
三原色で作る(赤+黄+青)
手元に茶色がない場合は、まず「茶」を作ってから黄土色に寄せると安定します。
- 赤+黄でオレンジ寄りを作る
- そこへ青をほんの少し加えて茶に落とす
- 茶になったら、黄を足して黄土色へ戻す
ポイントは「青は一気に入れない」。青が強いと濁りやすいので、爪楊枝の先くらいの気持ちで足すと失敗しにくいです。この”青を少しずつ足す”考え方は、深い青を作るときにも重要で、群青色を狙う場合は「水色と赤で群青色を作る方法」が参考になります。
既製色(イエローオーカー等)がある人の時短ルート
- 既製のイエローオーカーがあるなら、それを基準に
- 明るく:黄(+白)
- 渋く:茶(+青少量)
で振るだけで、欲しい黄土色に寄せられます。
比率の調整法:狙った黄土色に寄せる
黄土色は「作る」より「寄せる」が大事です。ここだけ覚えると応用が効きます。実際、他の色作りでもこの”寄せる”工程が重要で、比率調整に慣れると混色全体の再現性が高まります。
明るくしたい(明度を上げたい)
- まずは黄色を足す
- さらに明るくしたいときだけ白を少量
※白を入れすぎるとベージュ寄りになりやすいので、黄→白の順がおすすめです。
暗く・渋くしたい(落ち着かせたい)
- 茶色を足す(入れすぎ注意)
- もっと渋くしたいなら、青をごく少量(濁りやすいので最小限)
赤み・オレンジ寄りになったときの戻し方
- 黄色を少し足す(赤みの強さを薄める)
- それでも赤いなら、青をほんの少し入れて赤みを抑える
くすみ・濁りが出たときの原因と対策
濁りやすい原因はだいたいこの3つです。
- 混ぜすぎ:一度濁ると戻しにくい → 混ぜる回数を減らす
- 補色が入りすぎ:青や紫が強い → 別パレットで作り直し、青は最小限に
- 黒で落としすぎ:黒は強い → 使うなら米粒以下、基本は茶で落とす
少量ずつ試すコツ(パレット手順)
- ベース(黄多め)を作ってから、
別の場所で“少量だけ試す” - いきなり全部に混ぜない
「一発で正解を作る」より、「小さいサンプルを3つ作って一番近いものを採用」が早いです。
画材別:黄土色の作り方と注意点
同じ比率でも、画材が変わると見え方が変わります。顔料の性質や乾燥後の見え方、重ね方の違いによって、同じ黄土色でも印象が大きく変わるため、画材ごとの特性を意識することが大切です。
水彩:透明感を残す黄土色
水彩では、黄土色は単体で完結させるよりも、周辺色と組み合わせて使うことで奥行きが出ます。とくに影色として青系をどう作るかで印象が大きく変わるため、寒色混色の基本を押さえておくと表現の幅が広がります。
また、水彩は水分量によって明度と彩度が大きく変わるため、「混色した色」と「紙に置いた色」が一致しないことも多い画材です。その前提で、少し明るめ・少し暖かめを意識して作ると失敗が減ります。
- 黄土色は濃く塗ると土っぽく、薄めると砂や光が表現できます
- 混色はパレットで作りつつ、
仕上げは水で薄めて段階を作るのが水彩向き - 一色で塗り切らず、薄い層を重ねて深みを出す
コツ:
- まず薄く置く → 乾いてから重ねる
- 一度で濃くすると重く見えがち
- 乾燥後の色を確認してから次の層を決める
アクリル:乾燥後の色変化に注意
アクリルは乾燥が早く、乾くと少し暗く見えることが多い画材です。そのため、混色した直後の色だけで判断せず、乾いた状態を前提に色を作ることが重要になります。
- 乾くと少し暗く見えることがあるので、
仕上がりを見越して気持ち明るめに作ると安定します - 不透明度が高いため、白を入れすぎると一気にベージュ寄りになります
コツ:
- 小さなテストスウォッチを作って乾かす
- 乾いた色を見てから本番に使う
- 必要なら最後に黄(+白)で戻す
ポスターカラー/ガッシュ:不透明混色のコツ
ポスターカラーやガッシュは不透明度が高く、白の影響を強く受けます。そのため、黄土色を作るときは「白をいつ入れるか」が仕上がりを大きく左右します。
- 不透明系は白が効きやすく、
ベージュ寄りになりやすいです - 少量の白でも明度が大きく変わる点に注意します
コツ:
- 白で明るくする前に、まず黄で調整
- 影は黒ではなく、茶+青少量で落とすと自然
- ハイライト用と下地用で色を分けて作る
色鉛筆:レイヤリングで黄土色を作る
色鉛筆では「混ぜる」よりも「重ねる」ことで黄土色を作ります。紙の色や質感もそのまま色味に影響するため、強く塗りつぶさず、下地を活かす意識が大切です。
おすすめの作り方:
- まず黄色を薄く塗る
- 次に薄茶〜茶色を重ねる
- 必要なら黄をもう一度重ねて温度感を戻す
- 影になる部分だけ、茶や青系を軽く足す
コツ:
- 強く一気に塗らず、薄く重ねる
- 紙の目を活かすと砂っぽい質感が出ます
- 消しゴムで軽く抜くとハイライト表現にも使えます
100均・学童絵の具で再現するコツ
色数が限られている場合でも、順番と量を意識すれば十分に黄土色は再現できます。とくに学童用絵の具は発色が強いことが多いため、最初は薄めに作るのが安全です。
- 色数が少ない場合は、
**黄+茶(なければ赤+黄+青)**の順で作る - まずは「暗すぎない黄土色」を作ってから、
影色は別で作ると失敗が減ります
すぐ使える黄土色パレット例(用途別)
黄土色は単体より、周辺色とセットにすると一気に使いやすくなります。ここでは「基準(基本)→影→ハイライト」をワンセットにして、すぐ塗り分けできる形にしました。
加えて、同じセットでも仕上がりを安定させるために、次の考え方を意識すると便利です。
- 同じ基本色から派生させる(別々に作らない)
- 影色は「暗く」だけでなく「冷たさ(青み)」も少し足す
- ハイライトは白を急に入れず、まず黄で持ち上げる
風景用(地面・砂・岩)
- 黄土色(基本)
- 影:黄土色+茶(+青少量)
- ハイライト:黄土色+黄(+白少量)
使い分けの目安:
- 砂:基本よりもハイライト寄り(黄を多め、白は最小限)
- 土・泥:影寄り(茶を少し増やし、青は“触れる程度”)
- 岩・石:影色に青を少し足して冷たさを出す(青の作り分けは「マゼンタとシアンで青を作る方法」の考え方が役立ちます)
コツ:
- 遠景は影色を薄くして彩度を落とすと奥に引っ込みます
- 手前はハイライトを少し強めにして光を拾わせると立体感が出ます
人物用(肌の下地・影色展開)
- 下地:黄土色+白少量(ベージュ寄り)
- 影:黄土色+茶(赤みが欲しければ赤を少量)
- 血色:黄土色+赤をごく少量(入れすぎ注意)
使い分けの目安:
- 肌の下地:白を入れすぎると粉っぽくなるので、まず黄土色を薄めたり黄で整えてから白を足す
- 影:黒ではなく茶で落とし、必要なら青を“本当に少し”だけ入れて濁りを避ける
- 血色:赤は少量で十分。強くなりすぎたら黄土色を少し足して戻してから、もう一度だけ赤を触れる
補足:
- 頬や指先など赤みが欲しい部分は、血色を上から薄く重ねると自然です
- 深い青寄りの影が必要な場面(室内光や夜など)は、群青寄りの青を少し混ぜると影の質が上がります(参考: 水色と赤で群青色を作る方法 )
アンティーク・クラフト用(古紙・木・革っぽさ)
- 古紙:黄土色+白+茶ほんの少し
- 木:黄土色+茶(木目に赤を少量)
- 革:黄土色+茶多め(仕上げに黄を少し戻す)
使い分けの目安:
- 古紙:白を増やして明度を上げつつ、茶で“古さ”を足す(茶を入れすぎると一気に汚れに見えるので少量ずつ)
- 木:基本の黄土色を下地にして、茶を濃淡で乗せると木目が作りやすい
- 革:茶を多めにして深さを出し、最後に黄を少し戻して“温かい革色”に寄せる
コツ:
- アンティーク感は「彩度を少し落とす」ことで出やすいので、混ぜすぎずに薄い重ねで調整すると自然です
- 仕上げに薄い黄土色をうっすら重ねると、素材の色がバラついても統一感が出ます
実践ミニチュートリアル:5分で作る黄土色サンプル表
混色は、サンプル表を作ると一気に上達します。ここで一度「自分の基準」を作っておくと、次からは毎回ゼロから迷わずに済みます。
さらに、サンプル表は「その日に作った色の記録」にもなります。黄色や茶色はメーカーや絵の具の種類(水彩・アクリルなど)で発色が少し違うので、自分の手持ちの絵の具で出る黄土色を見える形で残しておくと、再現がぐっと楽になります。
おすすめは、紙の端に小さく作るのではなく、親指の爪くらいの面積で塗ることです。面積が小さすぎると、明るさや赤み、濁り具合が読み取りにくくなります。
比率3パターン(まずこれだけ)
- A:茶1:黄2(基準)
- B:茶1:黄3(明るめ・砂寄り)
- C:茶2:黄3(渋め・土寄り)
できれば、各パターンを2段階で塗ってみてください。濃いままの見え方と、薄めたときの見え方が分かると、用途に合わせた判断が一気に速くなります。
- 上段:そのままの濃さ(チューブから作った原液寄り)
- 下段:水(またはメディウム)で薄めた状態(薄塗り)
さらに余裕があれば、同じ比率でもう1マス作って、
- 白をほんの少し足した場合(ベージュ寄りになる境界)
- 青をほんの少し触れた場合(影色に寄る境界)
の「限界ライン」を確認しておくと、後の調整が安全になります。
紙の端に3つ塗って、乾いた状態(または完全に塗った状態)で見比べると、次から迷いません。さらに、余白に「Aは砂」「Cは土」など、用途メモを添えておくと、必要な場面で選びやすくなります。
できれば用途メモはもう一歩だけ具体的にして、
- 「砂/石/木」など対象物
- 「下地/影/ハイライト」など役割
のどちらかを書いておくと、同じ黄土色でも使い分けがしやすくなります。
黄土色→影色→ハイライトを作り分ける
- 影色:基準の黄土色に茶を少し、足りなければ青をほんの少し
- ハイライト:基準の黄土色に黄を少し、さらに上げたいときだけ白少量
ここもサンプル表に「影」「基準」「明るい」の3マスを並べて、段階セットとして残しておくと便利です。
影色は一気に暗くせず、まず茶で落としてから、最後に青を“触れる程度”に足すと、濁りにくく自然に締まります。影が急に黒っぽくなった場合は、青や黒が強すぎることが多いので、基準の黄土色を少し足して戻してから、もう一度茶で落とすと安定します。
ハイライト側は、白を入れすぎると一気に粉っぽく(不透明っぽく)見えやすいので、まず黄で明るさを上げてから白を足す順番がおすすめです。とくに水彩では、白を混ぜるより「薄める」ほうが自然なハイライトに見えることも多いので、画材に合わせて選んでください。
統一感を出す「薄い重ね(グレーズ)」の考え方
仕上げに、薄い黄土色を全体にうっすら重ねると、
色がバラついても「同じ光の中にある」ようにまとまります。
グレーズをするなら、
- 薄い黄土色を作る(水彩なら水多め、アクリルならメディウムや水で薄く)
- 全面を塗りつぶさず、必要なところだけ薄く重ねる
- 乾かしてから、足りなければもう一度
という順にすると失敗しにくいです。濃く一回でかけるより、薄く二回のほうが調整が効きます。
さらに安定させたい場合は、グレーズ前に「一番薄い黄土色」を別に少し残しておき、最後に全体を見ながら“足りないところだけ”補うと、ムラが出にくくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 黄土色が濁るのはなぜ?
A. 混ぜすぎ、または青・黒が強すぎることが多いです。特に、すでに複数の色が混ざった状態でさらに色を足すと、彩度が一気に落ちて濁りやすくなります。
黄を先に多めに出して、茶・青は少量ずつ足すと濁りにくくなります。
濁りを防ぐコツは、「足す順番」と「混ぜ方」を毎回そろえることです。
- 足す順番は 黄 → 茶 →(必要なら)青 →(必要なら)白 を基本にする
- 練るように混ぜず、回数を決めてサッと混ぜる(水彩は特に混ぜすぎ注意)
それでも濁る場合は、青や黒を入れた時点で戻しにくくなっていることが多いので、
青を入れる前の黄土色を少し別に残しておくと、後から調整しやすくなります。
Q2. どの黄色/どの茶色を選べばいい?
A. 基本的には手持ちの絵の具で問題ありませんが、仕上がりを安定させたいなら色の性質を意識すると失敗が減ります。
- 黄色:レモンイエローよりやや暖かい黄(オレンジ寄りの黄のほうが黄土色になりやすい)
- 茶色:赤茶でも黄土色は作れます(赤みが出やすいだけ)
黄色が冷たく見える場合は、黄土色が砂ではなく「くすみ」に寄りやすくなります。
その場合は、黄色を多めにしてから茶を足すと、温度感を保ちやすくなります。
赤みが強い場合は、青をほんの少し入れて落ち着かせてください。入れすぎると一気に濁るので、爪楊枝の先で触れる程度が目安です。
Q3. 黒は使っていい?
A. 使えますが、黄土色は黒が効きすぎて重くなりがちです。特に広い面積に使う場合、黒を混ぜると「泥色」に見えやすくなります。
暗くしたいときは、基本は茶で落とし、それでも足りないときだけ黒を米粒以下にしてください。
黒を使う場合は、
- 直接混ぜるのではなく、薄めた黒を少し取る
- 影色専用として、別に作った色に使う
といった方法にすると、重くなりにくくなります。
Q4. デジタル(RGB/HEX)で近い黄土色は?
A. 表示環境や背景色によって見え方は変わりますが、目安としては次の値が使いやすいです。
- HEX:#C2A46A(明るめの黄土色寄り)
- HEX:#B98B4A(やや渋く落ち着いた黄土色)
ここから、
- 明るくしたい → 明度を上げる(黄みを残す)
- 渋くしたい → 彩度を下げる(赤みが出たら色相を黄寄りへ)
という方向で調整すると、目的の黄土色に近づけやすくなります。
まとめ:今日から再現できる黄土色の作り方
- 最短は 茶:黄=1:2 を起点にする(迷ったらここへ戻る)
- 明るく:黄(+白少量)/渋く:茶(+青少量)(白・青はどちらも“入れすぎ注意”)
- 迷ったら、比率違いのサンプルを3つ作って一番近いものを採用(A→B→Cの順で試すと速い)
- 仕上げの一手:全体の統一感を出したいときは、薄い黄土色を「うっすら重ねる」
- 目的別の目安:砂寄りなら黄多め、土寄りなら茶多め、赤みが強いときは黄で薄めてから青をほんの少し
黄土色は、風景にも人物にもクラフトにも使える万能色です。まずは基準レシピ(茶:黄=1:2)を作って、乾いた状態や重ねた状態も確認しながら、目的に合わせて寄せてみてください。
慣れてきたら、同じ手順で「影色」と「ハイライト」もセットで作るのがおすすめです。黄土色を中心に、明るい段階と暗い段階が揃うだけで、絵やデザインの立体感が一気に出やすくなります。
