中学生の家庭科で行う絵本作りとは？
家庭科の絵本作りは、生活に役立つ知識を「だれかに伝える力」を育てる学習です。食事、衣服、住まい、家族の関わり、安全など、毎日の暮らしにつながる内容を、お話としてわかりやすくまとめます。作品を通して、相手の気持ちを考える姿勢や、情報を整理して表現する力が身につきます。
絵本は、文字だけでは伝えにくいことも、絵や構図で直感的に伝えられます。読み手の年齢や状況に合わせて語り口を変えることで、思いやりや配慮も学べます。完成した作品は、読み聞かせや掲示で共有されることも多く、学級や家庭でのコミュニケーションにも役立ちます。
なぜ家庭科で絵本を作るの？授業の目的とねらい
– 生活の知識をお話にして、相手に伝える練習をする
– 調べたことを自分の言葉でまとめる力をつける
– 読み手（対象）に合わせたことば選びや絵の見せ方を学ぶ
– 作品づくりを通して、計画→実行→見直しの流れを体験する
どんなテーマが評価されやすい？家庭科らしさのポイント
– 食：バランスのよい食事、食の安全、食材の大切さ
– 衣：洗濯や繕い、季節に合う服装、衣類の扱い方
– 住：片づけ、掃除、節電・節水、災害時の備え
– 家族・福祉：家の手伝い、思いやり、地域のつながり
– 安全：台所の道具の扱い方、やけど・けがをふせぐ工夫
ミニQ&A：提出形式やサイズは？
– よくある例は「B5〜A4サイズ・8〜12ページ」。ただし最終的には授業の指示を確認しよう。
初心者でもできる！絵本作りの基本ステップ
ここでは「1 決める→2 組み立てる→3 仕上げる」の順に進めます。おおよその所要時間も目安として書いています。自分のペースや授業時間に合わせて調整してください。
ステップ1 テーマ・主人公を決める（約20〜30分）
まず、読み手（だれに読んでもらうか）を決めます。たとえば「小学校低学年の弟」「家族」「クラスの友だち」など、相手を具体的に思い浮かべると、ことば遣いや絵の大きさが決めやすくなります。次に「何を伝えたいか」を一枚のメモにまとめます。
- 伝えたいこと：例「朝ごはんの大切さ」「台所での安全」など
- 主人公：例「おにぎりの子」「スポンジくん」「家族のねこ」
- 読み手：例「小学2年のいとこ」「弟」「クラス全員」
ステップ2 ストーリー構成（はじまり→なやみ→解決）（約30〜40分）
3幕構成で考えると、話がまとまりやすくなります。
- はじまり：主人公や場面の紹介。読み手が入りやすい一枚。
- なやみ：主人公が困ること、失敗すること。家庭科のテーマと結びつける。
- 解決：学んだ工夫で解決。読み手が「やってみたい」と思えるしめくくり。
ページ割りの例（8ページ）：
1 表紙／2 はじまり1／3 はじまり2／4 なやみ1／5 なやみ2／6 解決1／7 解決2／8 奥付（タイトル・作者名など）
12ページの場合は「はじまり」「なやみ」「解決」をそれぞれ1ページずつ増やし、ゆとりを持たせます。
ステップ3 下書き→清書（約60〜90分）
下書きはえんぴつで軽く描き、コマの大きさや文字量を決めます。次にペン入れや色ぬりを行い、表紙や奥付も作ります。貼る素材を使うときは、接着材の使い分けも考えます。
- 線画→色：輪郭を先に。色は大きい面からぬるとムラが出にくい。
- 見出し：タイトルは大きく、ふりがなをつけると低学年にも読みやすい。
- 仕上げ：はしをそろえ、角を少し丸めるとめくりやすい。
ミニQ&A：枚数が多いときの進め方は？
– まず全ページの「ラフ」（小さな下書き）を作る→本文→表紙の順でブロック作業をすると早い。
人気テーマ＆ストーリー実例集
ここでは4つの大分類で合計30個のアイデアを紹介します。各アイデアには、ねらい（読み手に何を伝えたいか）、対象（読み手の想定）、必要素材の例を付けました。必要素材は、授業で使える範囲を想定した一般的なものです。
食べ物・食育をテーマにしたアイデア
- 1. おにぎりの朝大作戦：朝ごはんを食べると元気が出る
- 2. やさいの色チーム：いろどりと栄養のバランスを知る
- 3. スポンジくんの台所修行：清潔にする理由を学ぶ
- 4. たまごのひみつ研究隊：加熱で安全に食べられること
- 5. しょくぱんと塩のケンカ：味つけのほどよさを考える
- 6. みそしるパズル：だしと具材の組み合わせを楽しむ
- 7. 水とうさんの一日：水分補給のタイミングを知る
- 8. お皿のダンス：食器の片づけ方を楽しく身につける
生活習慣・マナーをテーマにしたアイデア
- 9. ねむりの森のめざまし鳥：睡眠リズムの大切さ
- 10. はみがきロボの冒険：食後の歯みがきのタイミング
- 11. ただいま手あらい隊：帰宅後の手洗い習慣
- 12. ていねいさんとあわてんぼうくん：整とんのコツ
- 13. あいさつマスターへの道：やさしい言葉のかけ方
- 14. せつでんヒーロー：電気を大切に使う心がけ
- 15. せっすいのなぞ：水の使い方を見直す
- 16. ほけんだよりのひみつ：情報の読み取り方を知る
家族・お手伝い・思いやりをテーマにしたアイデア
- 17. ありがとうのリレー：家の手伝いがつながる物語
- 18. ぼくのエプロン：家族と料理をするときの役わり
- 19. きょうだい会議：仕事を分けると早く終わる
- 20. おつかいチャレンジ：安全に買い物をするときのポイント
- 21. おじいちゃんのボタン：衣服の直しを学ぶ心あたたまる話
- 22. プレゼントの包みかた：気持ちをていねいに伝える
- 23. ペットのごはん係：家族の一員としての配慮
- 24. だれかのための一歩：地域でできるやさしい行動
季節や行事をモチーフにしたアイデア
- 25. 春のピクニック計画：食べ物の持ち運びと衛生
- 26. 雨の日のおうち時間：室内で安全に楽しむ工夫
- 27. 夏の台所は大いそがし：火や熱への注意
- 28. 秋の大そうじ：ほこり対策と片づけの順番
- 29. 冬のあったかくらし：重ね着と加湿で快適に
- 30. 行事のごちそう絵日記：家族で準備を分担する
ミニQ&A：ネタの重なりを避けるコツは？
– 同じテーマでも「読み手」「場所」「季節」を変えると、オリジナルになる。例：同じ「手洗い」でも、帰宅時／調理前／外遊び後で場面を変える。
アイデア一覧（表）
| 大分類 | キーワード | ねらい | 対象 | 必要素材 |
|---|---|---|---|---|
| 食 | 朝ごはん、だし、衛生 | 元気の出る食習慣や清潔の大切さを知る | 低〜中 | 色画用紙、色鉛筆、のり |
| 生活 | 睡眠、整とん、節電・節水 | 生活リズムを整えムダをへらす | 低〜中 | 画用紙、ペン、ふせん |
| 家族 | 役割分担、手伝い、思いやり | 家の中で協力する気持ちを育てる | 低〜高 | 画用紙、折り紙、糸 |
| 季節 | 安全、掃除、行事 | 季節に合わせた安全と準備を学ぶ | 低〜中 | 厚紙、テープ、色紙 |
素材・デザインで差をつける！作り方の工夫
素材選びとデザインで、読みやすさが大きく変わります。ここでは、身近な素材のポイントと、色づかい・レイアウトの考え方をまとめます。安全面の注意も確認して、だれでも安心して手に取れる作品に仕上げましょう。
素材別のポイント（紙・フェルト・布・折り紙・厚紙 など）
- 画用紙：切りやすく描きやすい。本文に向く。
- 厚紙：表紙や台紙に。強くてそりにくい。
- 折り紙：小物や飾りに。色数が多く便利。
- 布・フェルト：手ざわりが楽しい。貼る面は少なめにして、めくりやすさを保つ。
- 写真：実物の様子が伝わる。個人情報の扱いに気をつけ、顔が写る場合は配慮する。
接着材の相性も考えます。紙にはのり、厚紙や布にはボンドなど、素材に合わせて選びます。強度が必要なところはテープで補強すると安心です。
色づかいとページレイアウトのコツ
- 配色：暖色（赤・黄）は元気、寒色（青・緑）は落ち着き。無彩色（白・黒・灰）は整える役。
- 視線の流れ：左上→右下に向かう動きを意識。矢印や指さしで導くと読みやすい。
- 余白：絵と文字のまわりに少し空間を残すと、情報が整理される。
- 文字サイズ：読み手に合わせて大きめに。低学年向けは一文字をはっきり。
- 見開きの役割：左で問題、右で解決など、対比を作ると伝わりやすい。
安全で見やすい作品にする注意点
- 角を丸めてひっかかりを減らす
- 厚すぎる飾りを広い面に置かない（めくりにくくなる）
- 接着材は少量ずつ。乾燥時間を取り、手や机をきれいに保つ
- 匂いの強い材料は避け、教室で使いやすいものを選ぶ
ミニQ&A：のりとボンドはどう使い分ける？
– 紙→紙はスティックのりで十分。布や厚紙など強さが必要な部分はボンド。いずれも薄く広げると仕上がりがきれい。
提出で高評価を取るためのチェックリスト
ここでは「分かりやすさ・安全・生活へのつながり」の3つの観点で、提出前に見直すポイントをまとめます。時間がないときも、このチェックだけは行いましょう。
評価基準と先生が見るポイント
- 分かりやすさ：読み手に合った言葉、情報量、絵と文字のバランス
- 安全：素材の選び方、接着の状態、持ち運びやすさ
- 生活へのつながり：作品を読んだ人が、明日から実行できる小さな行動があるか
丁寧さ・分かりやすさ・工夫を見せるコツ
- 字形をととのえる：タイトルや見出しは定規や下書きでガイドを作る
- 誤字対策：原稿を声に出して読むとミスに気づきやすい
- 情報量の調整：1ページに伝えることは1つ。絵が主役、文字は短く
- 工夫の見せ方：表紙のモチーフや奥付の一言メッセージで個性を出す
よくあるミスとその対策
- ページ抜け：ページ番号をうつしてから貼る
- 糊ムラ：薄く広げ、角を押さえる。重しをのせて数分おく
- 色のにごり：色数をしぼり、重ね塗りは乾いてから行う
- サイズ不ぞろい：同じサイズの台紙にそろえて貼る
ミニQ&A：誤字チェックの簡単な方法は？
– 音読してみる。友だちや家族に読んでもらい、読みづらいところをマークする。
提出前チェック表（表）
| 観点 | 確認項目 | 状態（○・△・要修正） | メモ |
|---|---|---|---|
| 分かりやすさ | 文字が大きく、ページごとに伝えることが1つになっている | ||
| 安全 | 角が丸く、はみ出す部材がない | ||
| 生活へのつながり | 読後に実行できる一言がある | ||
| 丁寧さ | のりムラがなく、ページ番号がそろっている | ||
| 提出形式 | サイズとページ数が指示に合っている |
みんなの実例＆よくある質問Q&A
完成イメージをつかみやすいように、人気のタイトル例と、よくある悩みへのヒントをまとめました。自分の状況に合う部分を取り入れてみてください。
実際に提出された人気の絵本タイトル例
- おにぎりがくれたあさの力
- ぼくのエプロン、はじめの一歩
- ていねいさんのそうじ教室
- きょうだい会議でミッション完了
- ひやけと水とうのなつやすみ
- ほめことばのレシピ
イラストが苦手な人向けの工夫
- コラージュ：雑誌の写真や印刷した図形を切って貼る
- 図形で描く：丸・三角・四角を組み合わせてキャラクターにする
- トレース：自分で描いた下書きをうすく写して清書する
- シルエット：色紙を切り抜いて形で見せる
時間が足りないときの時短テク
- ページテンプレを作る：枠や文字位置を先に決めて量産
- 色数を3色にしぼる：統一感が出て早い
- 背景は単色やパターンで：情報をしぼって主役を引き立てる
- 役割分担：脚本・作画・装丁・校正で分ける
よくある質問Q&A
- Q. 写真は使ってもいい？
– A. 授業の指示を確認し、顔が写る場合は配慮する。背景に個人情報が写らないように注意する。 - Q. 何ページが多い？
– A. 8〜12ページがよく使われる。授業のきまりに合わせて調整する。 - Q. 色えんぴつとマーカー、どちらが向く？
– A. 下地が見えないマーカーは強い発色、色えんぴつは重ね塗りでやわらかい表現ができる。好みと紙質で選ぶ。
ミニQ&A：共同制作の役割分担は？
– 例：脚本（話作り）／作画（絵）／装丁（表紙・製本）／校正（誤字チェック）。最後に全員で通し読みをして仕上げる。
まとめ：家庭科の絵本作りで自分らしさを表現しよう
家庭科の絵本作りは、生活の知恵をやさしく伝える学習です。読み手を思い浮かべ、テーマをしぼり、3幕構成でまとめると、だれにでも伝わる作品になります。素材や色づかい、レイアウトの工夫で、あなたらしさを表紙から奥付まで通してみましょう。提出前はチェック表で仕上げを確認し、自信を持って発表できる状態に整えます。
ミニQ&A：提出後の振り返りは何をする？
– よかった点、次に直したい点、友だちの作品から学んだ点を1つずつノートに書く。次の制作に生かせる。
