催促メールは失礼?リマインドの考え方と前提
メールで相手に「まだですか」と聞くのは、気が重いものです。けれど、仕事では待つだけだと予定が止まり、ほかの人にも影響が出ます。そこで使うのが「リマインド」です。リマインドは相手を責めるためではなく、進行を助けるための連絡です。
大切なのは、相手の事情を決めつけないことです。返事がない理由は、忙しい、見落とした、社内で確認中など色々あります。こちらは事実として「こちら側の状況」と「必要なこと」を伝え、相手が動きやすい形に整えます。
リマインドは短いほど良い、というわけでもありません。短くても圧が強い文章はあります。逆に、長いけれど丁寧で相手に優しい文章もあります。目指すのは、短くて具体的で、相手を助ける文面です。
また、送るタイミングも重要です。早すぎると急かしている印象になり、遅すぎると手戻りが増えます。期限の有無、相手との関係、仕事の大きさで考え方を変えます。
ミニQ&A:何日待ってからリマインドするのが無難?
目安は「期限があるかどうか」で変わります。期限がある場合は、期限の2〜3営業日前に一度送ると安全です。期限がない場合は、社内なら1〜2営業日、社外なら2〜3営業日を一つの目安にします。ただし、急ぎの案件なら早めに送って問題ありません。迷ったら「こちらの都合で恐縮ですが」と前置きして、理由と希望日を添えると角が立ちにくいです。
失礼にならない基本構成:3行テンプレと差し替え欄
リマインドで悩む人は、文章そのものより「何を書けばいいか」で止まりがちです。そこで、毎回使える基本構成を決めます。ポイントは、相手にとって必要な情報を最短で渡すことです。
基本は3つです。
- 要件(何の件か)
- 現状(こちらが困っている点、確認したい点)
- お願い(いつまでに、どうしてほしいか)
この3つを先に決めると、文章がぶれません。さらに、差し替え欄を固定しておくと、書く時間が減ります。
差し替え欄の例です。
- 相手名:○○様
- 依頼内容:○○のご確認/○○のご返信/○○資料のご提出
- 期限:○月○日(○)まで
- 理由:会議準備のため/社内申請の締切のため
- 代替案:難しい場合は○日までに一言だけでも
3行テンプレ(本文の骨組み)は次の形が使いやすいです。
- 先日お送りした○○の件で、進捗の確認です。
- こちらの都合で恐れ入りますが、○月○日までにご確認(ご返信)いただけますでしょうか。
- もし対応が難しい場合は、その旨だけでもご連絡いただけますと助かります。
このテンプレをそのまま貼るのではなく、差し替え欄を埋めて、相手に合わせた一言を足すのがコツです。
ミニQ&A:件名はどうする?相手が見つけやすい付け方
同じ話題の続きなら、件名は「Re:」のままでも構いません。相手がスレッドで追えるからです。一方で、相手が探しにくそうな件名や、内容が広すぎる件名なら、件名を少し具体的にします。例えば「【ご確認】○○の件(○月○日まで)」のように、用件と期限が分かる形にすると親切です。ただし件名だけ強く見えることもあるので、本文は柔らかく整えます。
角が立たない言い回し:柔らかい順に選べる早見表
リマインドで一番難しいのは、急ぎを伝えたい気持ちと、失礼にしたくない気持ちの両立です。そこで、言い回しを「柔らかい→少し強め」の順に並べ、状況に合わせて選べるようにします。
ここでのポイントは、相手の未対応を責めずに、こちらの事情を伝えることです。「まだですか」は相手の行動に目が向きますが、「こちらの準備の都合」はこちら側の状況に目が向きます。
| 目的 | 柔らかい言い方 | 標準 | 少し強め(期限が近い) |
|---|---|---|---|
| 確認したい | ご確認状況はいかがでしょうか | 進捗はいかがでしょうか | 状況をご共有いただけますでしょうか |
| 返信がほしい | お手すきの際にご返信ください | ○日までにご返信いただけますでしょうか | ○日までにご返信をお願いいたします |
| 期限を伝える | 可能でしたら○日までに | 恐れ入りますが○日までに | ○日までに必要となっております |
| 難しい場合の逃げ道 | 難しい場合はご都合を教えてください | 難しい場合は目安日をご連絡ください | 難しい場合は代替案をご相談ください |
同じ内容でも、最後を「でしょうか」にするか「お願いいたします」にするかで印象が変わります。まずは柔らかい表現から使い、期限が近いときだけ少し強めにします。
また、短い一言を足すだけで印象がやわらぎます。
- 念のための確認です
- こちらの準備の都合で
- お忙しいところ恐れ入りますが
ただし、丁寧語を重ねすぎると読みにくくなります。文章全体の長さとバランスを見て調整します。
ミニQ&A:「恐れ入りますが」を多用すると、くどくなる?
同じメールの中で何度も出てくると、たしかにくどく感じます。基本は1通につき1回で十分です。もし丁寧さを足したいなら、「お忙しいところ恐れ入りますが」を1回入れて、あとはシンプルに書くと読みやすくなります。丁寧さは言葉の数だけではなく、情報の出し方や相手への配慮でも伝わります。
初回のリマインド:やさしめテンプレ(短文版/丁寧版)
初回のリマインドは、強く言い過ぎないことが大切です。ここでは「確認」と「お願い」に寄せます。相手が見落としていた場合でも、気まずくならずに済みます。
まず、短文版は社内向けや、やり取りが多い相手に向きます。
短文版(初回)
- ○○の件、念のための確認です。
- お手すきの際にご確認いただけますでしょうか。
次に、丁寧版は社外向けや、相手に説明が必要なときに向きます。
丁寧版(初回)
- 先日ご連絡しました○○の件で、進捗の確認のためご連絡いたしました。
- こちらの準備の都合で恐縮ですが、○月○日までにご確認(ご返信)いただけますでしょうか。
- もしご対応にお時間がかかる場合は、目安だけでもご共有いただけますと助かります。
初回は、期限を強く押し出すより、相手が行動しやすい出口を用意します。「難しい場合は目安だけでも」という一文があると、相手は返信しやすくなります。
ミニQ&A:相手が忙しそうなとき、どんな一言を足す?
忙しい相手には、配慮は入れつつも、要件をぼかさないのがコツです。例えば「お忙しいところ恐れ入りますが、○日までに一言だけでも状況をご共有いただけますでしょうか」のように、求める行動を小さくします。返信のハードルが下がるので、結果として早く進みやすくなります。
期限が近いとき:急ぎを伝えるテンプレ(圧を弱める工夫つき)
期限が迫ると、こちらの焦りが文章に出やすいです。けれど、強い言い方は相手の反発や萎縮を生み、かえって遅れることがあります。圧を弱める工夫は「理由」「期限」「代替案」をセットで書くことです。
短文版(期限が近い)
- ○○の件、○日が締切のため、○日までにご確認をお願いいたします。
- 難しい場合は、対応可能な目安日をご連絡ください。
丁寧版(期限が近い)
- ○○の件につきまして、社内の手続きの都合で○月○日(○)までに確認が必要となっております。
- お忙しいところ恐れ入りますが、○月○日までにご確認(ご返信)いただけますでしょうか。
- もし難しい場合は、どの程度お時間がかかりそうかだけでもご共有いただけますと助かります。
「必要となっております」は強めにも見えますが、理由とセットなら納得されやすいです。また、期限だけを押し付けないように、代替案の行を必ず入れます。
ミニQ&A:期限をこちらから提示してもいい?角を立てない出し方
提示して問題ありません。ただし「命令」ではなく「相談」に見える形にします。方法は3つあります。1つ目は相談形で「○日までに可能でしょうか」と聞くこと。2つ目は選択肢で「○日まで、難しければ○日までに」と幅を持たせること。3つ目は理由添えで「会議準備の都合で○日までに必要です」と背景を短く書くことです。
2回目・3回目のリマインド:関係を崩さない再送テンプレ
2回目以降は、相手も「催促されている」ことを自覚しています。ここで強く言い過ぎると関係が悪くなります。一方で、こちらも待てない状況が増えます。そこで、文章の中心を「状況の整理」と「影響の共有」に置きます。
再送の基本は3点です。
- 前回の要点を短く再掲する
- こちら側の影響(次の工程)を共有する
- 相手が返しやすい出口を作る
短文版(2回目以降)
- 先日の○○の件、確認のため再度ご連絡いたします。
- ○日までに状況をご共有いただけますでしょうか。
丁寧版(2回目以降)
- 先日ご連絡しました○○の件につきまして、念のため再度ご連絡いたしました。
- こちらの工程の都合で、○月○日までに状況の確認が必要となっております。
- もしご対応が難しい場合は、現時点の状況だけでもご返信いただけますと助かります。
相手が返信しやすい出口の例です。
- まずは「確認中です」の一言だけでも問題ありません
- 対応が来週になる場合は、来週の何日頃かだけ教えてください
出口を小さくすると、相手が動きやすくなります。
ミニQ&A:同じ文面を再送しても大丈夫?最低限の追記は?
同じ文面のまま再送すると、相手によっては圧に感じます。最低限、1文だけ追記します。例えば「念のため再度ご連絡いたします」や「こちらの工程の都合で期限が近づいております」のように、再送の理由を添えます。件名も「【再送】○○の件」などにすると、相手が気づきやすくなります。
社内向け/社外向けの違い:敬語・情報量・スピード
リマインドは、社内と社外で同じ文章を使うとズレが出ます。社内はスピードと簡潔さが重視され、社外は丁寧さと背景説明が重視されやすいです。
社内向けのコツは、短く、行動を小さくすることです。例えば「確認お願いします」だけだと雑に見えるので、「○日までに確認できそうですか」のように質問形にすると柔らかくなります。
社外向けのコツは、理由と期限をセットで示すことです。相手の社内事情が見えないため、なぜ急いでいるのかが分からないと優先度が上がりません。背景は長く書かず、1行で十分です。
社内と社外で変えるポイントをまとめます。
- 敬語:社内は丁寧すぎると距離が出る/社外は丁寧さが基本
- 情報量:社内は最低限/社外は背景と期限を明確に
- スピード:社内は早めに短く送る/社外は適度に間隔をあけつつ期限前に送る
ミニQ&A:上司へのリマインドで無難な言い方は?
上司に「ご確認ください」と言うのが気になる場合は、依頼ではなく相談の形にします。例えば「念のため、○○の件をご確認いただけそうでしょうか」や「○日までに確認が必要なのですが、ご都合いかがでしょうか」のように書くと、押し付けに見えにくいです。上司の判断が必要なら「ご判断いただけますと助かります」とするのも自然です。
NG例と言い換え:印象が悪くなる書き方を表で直す
リマインドが失礼に見える原因は、相手を責める言葉や、決めつけの言葉が入ることです。無意識に強い表現を使ってしまうことも多いので、NG例を見て置き換えを覚えておくと安心です。
| NGになりやすい表現 | なぜ印象が悪いか | 言い換え例 |
|---|---|---|
| まだ返事がないのですが | 責められている感じが出る | 念のため状況を確認させてください |
| いつまでにできますか | 追い詰める質問に見える | 目安の時期をご共有いただけますでしょうか |
| 早くしてください | 命令に近い | ○日までに必要なため、ご協力いただけますと助かります |
| 前回も言いましたが | 圧と不満が出る | 先日ご連絡した件で、再度ご連絡いたします |
| 見落としていませんか | 決めつけになる | こちらの送付内容が届いているか確認させてください |
言い換えの基本は、相手の行動ではなく、こちらの状況に焦点を移すことです。さらに、相手が動ける「次の一手」を書くと、文章が柔らかくなります。
ミニQ&A:既読スルーっぽいとき、どう書けばいい?
既読かどうかはメールでは分からないので、決めつけない書き方にします。「届いておりますでしょうか」「念のため再送いたします」が安全です。例えば「念のため、先日のメールが届いているか確認のためご連絡しました。もし未着でしたら再送いたしますのでお知らせください」と書くと、相手を責めずに状況を前に進められます。
送る前のチェックリスト:短く、具体的に、相手を助ける
最後に、送信前のチェック項目を用意しておくと安心です。毎回ここを確認するだけで、失礼な文章を避けやすくなります。
- 件名で用件が分かるか(必要なら期限も入れる)
- 要件が1行目で分かるか
- 期限があるなら、理由とセットで書けているか
- 相手の事情を決めつける言い方になっていないか
- 相手が返信しやすい出口があるか(目安だけでも、など)
- 長すぎないか(背景は1行で十分か)
リマインドは、相手を動かすための文章というより、相手が動きやすい材料を渡す文章です。短く、具体的に、相手を助ける。この3つがそろうと、やり取りがスムーズになります。
ミニQ&A:最短で整えるなら、どこだけ直せばいい?
時間がないときは、3つだけ直します。1つ目は「要件」を1行目に置くこと。2つ目は「期限」を具体的な日付で書くこと。3つ目は「難しい場合の出口」を1行足すことです。これだけでも、相手は返信しやすくなり、印象も悪くなりにくいです。
